アニメのポスター

当ショップでは、『AKIRA』(1988)、『攻殻機動隊』(1995)、『メトロポリス』(2001)などの背景美術の複製画ポスターを販売しています。これらのアニメは、日本アニメを代表する長編SF作品であり、国内外のファンから今もなお支持されています。


『AKIRA』における「ネオ東京」のディストピア的な都市風景や『攻殻機動隊』における当時の香港をモデルとした混沌とした街並み、『メトロポリス』のどこかレトロな雰囲気を持った未来都市など、どの作品においても、1980〜90年代に文化を牽引したサイバーパンクを彷彿とさせる独自の世界観が際立っています。そして、背景美術として描かれたこれらの「都市」は物語を支える重要なキャラクターとして、時に主人公たち以上に強い存在感を放っています。

背景美術の複製画

当ショップを運営する映像ワークショップ合同会社代表の明貫紘子は、2010年からドイツ在住のシュテファン・リーケレス氏(キュレーター/アニメ研究者)とともに、アニメ背景美術のリサーチおよび展覧会企画を継続してきました。日本で初めての企画展「アニメ背景美術に描かれた都市」(2023年)を実現するにあたり、美術監督へのインタビュー映像制作や共同キュレーターを担い、背景に込められた思想を丁寧に掘り下げました。

リーケレス氏が運営するRiekeles Galleryと連携し、山田写真製版所(富山県本店)が開発した高度な印刷技術「ソルグラフ」を用いた複製画制作のコーディネーションなど、背景美術の保存・研究・発信を通じてアニメ文化を次世代へ繋げる取り組みに注力しています。

これらの背景美術ポスターは、Riekeles Galleryが販売するポスター版を映像ワークショップが日本国内で唯一輸入・販売しているものです。オリジナルの背景美術を高精細なデータで忠実に再現し、その都市風景や建築、ディテールの奥深さを身近に楽しんでいただけるようになっています。


日常空間に飾ることで、通常は鑑賞が難しいアニメの背景美術がもたらす芸術性を感じ、物語を想起する体験をしていただきたいと考えています。さらに、長年リサーチを重ねてきた私たちが携わるこのプロジェクトは、背景美術を「アート」として次世代に届けるためのひとつの架け橋でもあります。ぜひポスターを通じて、名作アニメが築いてきた世界観や、手描きの絵に宿るクリエイターたちの卓越した技術を感じ取っていただければ幸いです。

大友克洋監督『AKIRA』1988年

1988年に公開された『AKIRA』は、漫画家の大友克洋が自身のマンガ原作を監督した革新的なSFアニメ映画。2019年の「ネオ東京」を舞台に、超能力や暴走族、国家の陰謀が入り乱れる壮大なストーリーを描いた。都市そのものがひとつのキャラクターのように息づいており、首都高速や東京湾埋め立て計画をモチーフにしたリアリティのある街並みを、圧倒的な描写で表現している。

押井守監督『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』1995年

士郎正宗の原作マンガを中心に、押井守や神山健治らが手がけた一連のSFアニメ作品。電脳化技術が普及した近未来社会で、公安9課の草薙素子たちがサイバーテロや情報犯罪に対峙する物語が描かれる。作中には香港をモデルにした雑踏や近未来型のインフラが登場し、ロケハンで撮影した写真をもとに描き込まれた背景美術が、アナログとデジタルが交錯する独特の世界観にリアリティを与えている。

りんたろう監督『メトロポリス』 2001年

手塚治虫の原作をもとに、りんたろう監督と脚本の大友克洋が新たな視点で映像化した2001年のアニメ作品。高度なテクノロジーとレトロ建築が混ざり合う未来都市“メトロポリス”を舞台に、人間とロボットの共存をめぐるドラマが展開する。ローマや欧米の建築様式を下地に、デジタル技術と手描き背景を組み合わせて生まれた都市景観は、どこか懐かしさを帯びながら圧倒的なスケールを感じさせる。

ソグルグラフ版の作品はリーケレスギャラリーからお買い求めいただけます。

美術ボードと背景美術

宮崎駿監督『魔女の宅急便』1989年

美術ボードとは、背景美術の制作プロセスにおいて、絵コンテや美術設定に基づいて色味や世界観の方向性などを背景スタッフと共有することを目的にして制作されるサンプル画です。
これらの美術ボードは、ロケハンで訪れたスウェーデンの風景や野外博物館(スカンセン)の他、宮崎監督からのリクエストで「サンフランシスコの坂みたいな感じ」などのイメージを組み合わせて描かれました。

美術監督である大野広司の観察眼に裏付けられた写実的で繊細な表現に加えて、大野の人柄が伝わってくるような柔らかい色の表現が印象的です。

大野広司(OHNO Hiroshi)

1952年、愛知県生まれ。美術監督。1977年、小林プロダクションに入社。テレビ・シリーズ『とんでモン・ペ』(82年)で初めて美術監督を務めた。1983年、スタジオ風雅に入社し、1997年から代表。『AKIRA』(88年)で背景と美術ボードを担当。主な美術監督作品に、『魔女の宅急便』(89年)、『走れメロス』(92年)、『ももへの手紙』(12年)、『おおかみこどもの雨と雪』(12年)、アヌシー国際アニメーション映画祭受賞作品『百日紅 Miss HOKUSAI』(15年)、『夜明け告げるルーの唄』(17年)、『鹿の王 ユナと約束の旅』(21年)など。著書に『大野広司 背景画集』(13年、廣済堂出版)ほか、絵本『はじめての世界名作えほんシリーズ12 おおかみと七ひきのこやぎ』(18年、ポプラ社)の背景など。